(高縄山 標高986m)
【思い出す 夏 の季語】
季節感が感じられる言葉として、味わい深い俳句の「季語」。
しかし時代の変化によって、季語も大きく移り替わってきました。
そこで、かつて親しまれた季語を、季節ごとに振り返ってみました。
驟雨(しゅう・う)
言の葉をさらってしまう驟雨かな大高翔(俳人・徳島県出身)
盛夏の「俄か雨」のことを言い、「夕立」とほぼ同じ意で使われます。
暑かった真夏の日の午後。 樹木の青葉をたたいて大地に飛沫をあげ、
急に降ってきた 「驟雨」 は、話し声さえ打ち消すほど激しく、潔く、
一瞬、家の回りに爽やかな涼を呼んで、とても風情の深い言葉でした。
けれど昨今の異常気象は、驟雨におさまらず、「ゲリラ豪雨」などという、
なんとも剣呑な言葉に取って替わってしまいました。

「驟」は、古代中国では「馬、疾く
歩する」語とされ、「早い」「俄か」の意味として
使われたそうです。大気が不安定なために起こる空気の対流が、激しい上昇気流を生み出し、
雹などをともなって積乱雲から降るのが「驟雨」で、さっと降って止んだあとは、嘘のように
からりとあがり、暑さは遠のいて、涼気を感じさせてくれる心地良いものでした。
日本語には「夕立は馬の背を分ける」というおもしろい言葉もあって、ここは土砂降りなのに、
隣町は晴れているといった局地的な降雨のさまを表しています。
驟雨のあとに訪れる、穏やかな夏の夕暮れ----。
そんな日が再びよみがえることを願うばかりです。